教育コース

来たれ「次の環境」アーキテクト

高等研究教育院 所長 稲岡 恭二

2020年10月26日、衆議院本会議及び参議院本会議で菅総理の所信表明演説がありました。その中で、菅総理は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言する。積極的に温暖化対策を行うことが産業構造や経済社会を変革し成長につながる」と述べ、発想の転換を求めました。まさにCOP21(気候変動枠組条約締約国会議、2015年、パリ協定)で採択された内容を、日本が先導するような勢いです。
日本は1991年にCOP3の開催国になりましたが、それから約30年が経とうとしています。様々な取組みが進んでいますが、例えば温室効果ガスの9割以上を占めるCO2ガス排出量が総じて減じたかといえば、決してそうでもないのです。産業部門では省エネ、先端技術の投入等で、1990年比で20%程度削減できた等、頑張っているところですが、一方で、家庭部門では逆に微増が続き、40%程度増えているのです。対象物質の時間に対する累積を考えれば、瞬間の値あるいは社会構造の転換だけでなく、総理が述べているように、種々の発想の転換と実行、文字通り革を剥いで改め、改革を実行するステージに来ているのです。

私は伝熱工学分野の研究者の一人ですが、環境問題は技術の積み重ね、組み合わせで解決できると思って関わって来ました。しかし今では、まさに発想の転換が必要だと強く感じています。もちろん技術が無ければ環境問題は解決しないのは確かです。しかし、環境が人や人の活動を取り囲むものであると考えた時、技術一辺倒では解決策も限りがあります。それが証拠に、技術力のある日本においても、削減が思うように進まない現状があります。環境の真の理解には、人そのもの、そして人と人のつながりを視野に入れることが欠かせません。課題を設定し解決するには、様々な環境に対する空間を把握し、時間軸を加味して総合的に捉え、これらに向き合う視点が必須になります。環境問題の解決には、技術面に加え、こういった視点を持ち行動する人物・人材の育成が鍵になります。

同志社-ダイキン「次の環境」研究センターは、研究はもちろん、「次の環境」を創る人物・人材を育成するために、2021年4月に「次の環境」協創コースを開設します。
本協創コースでは、空調技術で世界をリードするダイキン工業の若手社員の方々と本学の大学院生が一緒になってテーブルを囲み、お互いに刺激を受けながら学修します。人とはいったいどんな生き物か、人の内側の環境から始まり、人と人が営む社会、地域、文化、制度と環境の関わり、社会共通資本としての環境の在り方、最先端技術など、環境を総合問題として捉える視点と知識を習得します。加えて、本コースの受講生には、発想の転換を鍛錬するにあたり、現在から抜け出し、10年、20年先の夢を描いていただきます。現在の社会動向から未来を想像し、環境問題を解決する課題を設定します。将来の現役世代になりきって、課題に応じた新たな技術アイデア等を話し合い、何も無い0の状態から創ります。さらにそれらのアイデアから研究テーマを起こします。
このように本コースは、「今の環境」を正確に理解して他者に説明でき、0から1を生むような時間軸を意識した体験を通して、「次の環境」を創る方法を提案、実現できる人物・人材を社会と一緒になって育成します。

人がその土地で心豊かに生きてきたように、そしてその生活が安心して続くように、あなたも「次の環境」を考え、創造する人物を目指してみませんか。

高等研究教育院 所長 稲岡 恭二